婦人靴メーカーで靴づくりに携わっていた25年の間、足にトラブルを抱えて市販の靴が履けない人が多くいることはわかっていました。実際私の母もひどい外反母趾を患っており、「履ける靴がない」とよく嘆いていました。
靴の流通はメーカーから中間業者を経てお客様のもとへ渡るため、作り手と履く人の距離がありすぎて直接履き心地を聞くことができず、お客様の声を靴づくりに反映できない歯がゆさを常に感じていました。
そんな折シューズプラザが新しくできることを聞き、これまで長年考えていた“お客様から直接足の問題点を聞きながら靴づくりができる店”を実現できると思い、快足館の開業を決意しました。
起業より5年目、あるお客様より「履きやすい靴は持っているが、高齢になると家で過ごす時間が増えるので、室内で履けてしかも外反母趾が楽になる履物はないか」との注文がありました。
そこで軽くて、室内で歩く音が響かない、フローリングを傷めないサンダルを開発したところ、「そんなものがあるならぜひ作ってほしい」と他の多くのお客様からも反響があり、2005年国のベンチャービジネスの支援プロジェクトに応募し、室内履きサンダルの生産体勢を整えました。
*2011年7月特許取得(特許第4789470号)
キツさなどの条件をクリアした状態での靴の履き心地や履きやすさは、インソール(足底板)によるフィット感が大部分を占めるということがわかっていました。
そこで個々人の歩行時にかかる足裏の圧力と、体の軸のブレ具合を計測し、それを緩和・補正するインソール切削機を導入しました。これによりオーダーシューズと組み合わせることでより一層フィット感が高まりました。
開業からこれまで7000人近いお客様の靴を作ってきましたが、当初は“足のトラブル”というものが、私の想像をはるかに超えたものであり、想像と現実の違いに驚愕したものでした。
今では多くのお客様から注文を頂くようになり、単なる外反母趾の調整でも、それはお客様にとって足にやさしい靴づくりになる、そしてそのような経験が積み重なって今の自分の引き出しの多さになっている、ということを実感しています。 これからも快足館は“履いて楽、歩いて楽”な足にやさしい靴づくりを目指して歩んでいきます。